"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
「真琴さん?」

「はい?」

「どうしたの?ぼーっとして」

「あっ、な、なんでもないです」

「じゃあ、僕は行くね」

「洸平さん、今日は会えて嬉しかったです。それから、覚えていてくれてありがとうございました」

「僕の方こそ、ありがとう。君に会えて本当に良かった」

彼が真琴の前に手を差し出した。真琴は差し出された手をそっと握り返し、微笑んだ。

「じゃあ」

優しい握手を交わした後、彼は踵を返した。真琴は、遠ざかる彼の後ろ姿を、見えなくなるまでずっと見つめていた。


この場所に来る前は最悪な心情だったのに、今は心に爽やかな風が吹いている。

「洸平さん」

見えなくなった彼の後ろ姿に呼びかけた。



真琴も部屋に戻り帰り支度にとりかかる。2日間で起こる内容ではないだろうというほどの出来事は、オセオンと過ごした素敵な時間と、洸平さんとの穏やかな時間だけを持ち帰ることにした。

また明日から日常が待っている。自分なりに前に進んでみようと、真琴は前向きな気持ちを胸にホテルをあとにした。
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