"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
エレベーターは無言のまま降下を始める。真琴が固まったまま動かずにいると、
「怪我はなかったか?」
艶のある低い声が、後方斜め上から降りてきた。ゆっくり身体を振り返らせると、琥珀色の瞳が真琴を見下ろしていた。そして近づき、首からぶら下げているネームをそっと手に取る。
「やはり君だったか」
「申し訳ございません、人違いではないでしょうか」
真琴という名だけはバレてしまっているが、葛葉は知らないはずだ。こうなったらあの日の真琴は、全くの別人だということにしようと、声がうわずりながらも否定戦の構えをとった。
「…ほう、しらを切るつもりか?」
「そう言われましても…」
「まぁいい。ならば、明日の11時50分、私の部屋に来なさい、葛葉真琴さん、これは業務命令だ。担当課長には私が許可をとっておく」
「は、はい……」
エレベーターの扉が開き、高御堂専務は、何事もなかったようにスタスタと歩いていった。真琴は彼の後ろ姿を、大きなため息をつきながら見送った。
「怪我はなかったか?」
艶のある低い声が、後方斜め上から降りてきた。ゆっくり身体を振り返らせると、琥珀色の瞳が真琴を見下ろしていた。そして近づき、首からぶら下げているネームをそっと手に取る。
「やはり君だったか」
「申し訳ございません、人違いではないでしょうか」
真琴という名だけはバレてしまっているが、葛葉は知らないはずだ。こうなったらあの日の真琴は、全くの別人だということにしようと、声がうわずりながらも否定戦の構えをとった。
「…ほう、しらを切るつもりか?」
「そう言われましても…」
「まぁいい。ならば、明日の11時50分、私の部屋に来なさい、葛葉真琴さん、これは業務命令だ。担当課長には私が許可をとっておく」
「は、はい……」
エレベーターの扉が開き、高御堂専務は、何事もなかったようにスタスタと歩いていった。真琴は彼の後ろ姿を、大きなため息をつきながら見送った。