"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
人生に初めて迷いが生じた。
正直、日本から離れたいという気持ちもあった。恭平が後継者だということは周知されており、見合い話や、直接アプローチを受けることが日常茶飯事となっていた。恋愛に対して特にこだわりもなく、勧められれば承諾し交際した。だが、ほとんど恭平のルックスとステータス目当てだった。稀に恭平自身を見ようとしてくれた女性もいるが、雪乃の嫌がらせに屈し離れていった。
心のどこかで、恭平のことを想い、雪乃の嫌がらせにも動じない女性が現れるのを期待していたのかも知れない。そして気づかぬうちに、選別材料として雪乃を利用してしまっていたのだ。女子高生の戯言。そう言い聞かせて。そんな自分が情けなく、許せなかった。いつの間にか、日本での生活に息苦しさを感じるようになっていた。

日本とフランス、自分にはどちらの生活が合っているのか、とうに答えは決まっていた。

だが、フランスでの生活を選べば、今までのように数日で帰国するというわけにはいかない。声優として活躍し、パニック障害の発作も落ち着いてきたとはいえ、洸平を残して日本を発つことなど、できるはずがない。何かあった時、すぐに駆けつけてやることができないのだ。そんな恭平の心情を洸平は見抜いていた。
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