"ぶっきらぼうで笑わない女神"の恋愛事情
恭平は腰を据えてワイン生産に没頭した。
より質の良いものを目指し、妥協は一切許さない。
現地スタッフ一丸となって取り組み作り上げたものは、情趣的ワインとして人々を魅了し、多くのワインラヴァーを虜にした。

恭平がこの場でワイン生産に没頭できるのは、本社という母体があってこそだ。母体が崩れれば、農園、醸造所、代々受けついできた先代の想い全てを手放さなければならなくなる。そんな事になれば本末転倒だ。そのことはいつも念頭に置いていた。

恭平がフランスに渡って6年、本社の状況は社長秘書の宝来を通し、常に把握している。
先日受診した人間ドックで社長の脳腫瘍が見つかったと連絡を受け、事態は急転した。
早期発見で急を要することはないが、治療に専念しなければならない。敏腕社長の不在は大きな痛手だ。
人には適材適所というものがある。
副社長は高齢で引退予定。専務はといえば、表に立って指揮するというよりも、支える側で力量を発揮するタイプ。恭平がフランスでの生活を選んだ事により、常務の役職に就いている恭平の従弟がいずれ社長に就任する運びとなり、今まさに社長の元で学んでいる最中だった。彼にとって今はまだ、社長代理は荷が重すぎる。
急遽役員会が行われ、副社長は辞任し、専務が新副社長に就任。恭平が専務として呼び戻されることとなった。社長が不在の間、後継者として育った恭平の元で常務を学ばせることに全役員が同意したのだ。臨時の株主総会が行われ、可決。

恭平は現地スタッフにワイン生産の全てを託し、帰国した。
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