「好き」って言ってよ!
「お父さんに連れられて葬式に行ったことは覚えているんだけど、その後のことは何もわからなかったの。

子供の頃の出来事だから忘れたんだと思ったけど…あの人にひどいことを言われて、そのショックで記憶が飛んじゃったのかも知れない」

「…記憶が飛んだのに嫌いになったの?」

「自分にとって嫌な記憶って何でもいいから忘れたいって思うでしょ?

精神からくる記憶喪失的なそんな感じ…なのかは何とも言えないんだけど、そう言う類いのものなのかなって。

でも何か嫌なことをされたって言うことはどこかで覚えていて、それであの人のことを嫌うようになったのかなって思うの」

専門家じゃないから何とも言えないけど…と、奈帆は自分が出した推測を終わらせた。

「ああ、なるほど…」

そう呟いた哲郎に、
「哲郎はその当時のことを覚えていない?」
と、奈帆に聞かれた。
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