地味系男子が本気を出したら。


「ごめん…」

「いえ…」


思わず目を逸らしてしまったけど、余計に心臓の鼓動は速くなる。
心臓はバクバクしてるんだけど、離れ難い距離でもあって。

まだ人混みの中だからと言い訳して、彼女の手を取って握りしめた。


「――えっ!?」

「人混み、危ないから。はぐれるといけないし」


ダメかな?嫌がられるかな?
頼むから拒否はしないで、と視線で訴えてみる。


「…あなた、気づいてなかったみたいだけど、さっきも手繋いでたのよ」

「えっ!?」


そうだっけ!?

……あ、そういえば、りんご飴の屋台でクラスメイトを見つけた時、咄嗟に手を取って走ったような……。
その後あんず飴を買ったから自然と離して、全然気づいてなかった……。


「ご、ごめん…」

「謝らなくてもいいのに。ほら、行きましょ」


桃は僕の手を握り返してくれた。
多分今日一、心臓が飛び出そうになった。


「今度は、さっちゃんも一緒に見れたらいいね」

「そうね」

「夏休み中、また遊ぼうね」

「ええ」

「…また、二人でも会いたいな」

「…いいわよ」

「えっ!ほんとに!?」

「いいって言ってるじゃない!」


幸せすぎて、顔がにやけずにいられない。

まだ君の瞳の奥に僕はいないと思うけど、少しでも映っているのかなって…自惚れてもいいのかな?

夜空に咲き誇る花を君と一緒に見れたこと、僕の一生の思い出になった。


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