地味系男子が本気を出したら。
春日井さんはやれやれと言うように肩をすくめる。
「だから、咲玖は俺のものだから」
そうはっきりと言い切る九竜くんがカッコよくて、とても眩しく感じた。
小学生で結婚する相手がいるなんて普通じゃないけど。
「なんか、すごいね」
「そう?」
「それに、九竜くんって強いんだね」
「彼、九竜道場って大きな武道場の息子なのよ」
「そうなの!?」
「空手に剣道、他にもやってたっけ?」
「柔道とかもやったことある」
すごい…それは一捻りなわけだ。
やっぱりカッコイイな…九竜くんって。
強いからっていうのもあるけど、それだけじゃなくて、もっと本質的なところが。
なんだか、上手く言えないけど、白凪さんのことを真っ直ぐ一途に想っているところとか。
いいな、僕もいつか…胸を張って春日井さんのこと、好きだって言える日がくるかな――?
ちなみに、翌日白凪さんに許嫁のことを聞いてみたら、
「うん、わたしと蒼永はいいなずけなんだよ〜」
とあっけらかんと言っていた。
許嫁になった経緯も教えてくれた。
親友同士の白凪さんと九竜くんのおじいちゃん同士が、孫を結婚させると前々から決めていたらしい。
つまりは、
「生まれた時から許嫁って…ほんとにすごいね」
「咲玖はあんまりわかってないけどね」
「え?どゆこと??」
「九竜も苦労するわよね…」
「別に」
なんとなく、二人の間に温度差があるのを感じた……。
気にしてないように見えてちょっと寂しそうにも見える九竜くんに、こっそりと耳打ちする。
「――あのね、僕は春日井さんが好きなんだ」