地味系男子が本気を出したら。


地元の花火大会だから、当然誰かに会う可能性はあったわけで。

でも、今日は誰にも会いたくない。


「…ああ、知り合いに会うのは面倒よね」

「それもあるけど、今の桃を見られたくないんだよ」

「え?」

「かわいいから、誰にも見せたくない」

「…っ!」


さっき見かけたのは、クラスの男子たちだったから尚更見せられない。

今日は僕だけが、独り占めしたいんだ。


「大志のそれは天然なの!?」

「え、それって?」

「だとしたら、タチが悪いわよ!」

「そ、そうかな…?」

「もう…っ!ほんとに調子狂うんだからっ!」


頬を真っ赤に染めて、手で顔を隠そうとする仕草がたまらなくかわいい。
今、この場で抱きしめたいくらい。

やっぱり、誰にも見せたくないな……。

桃のこういう一面を知ってるのは、僕だけがいい。


「咲玖へのお土産どうするの?」

「あっあんず飴発見!」

「あんず飴でもいっか」


さっちゃんへのお土産はりんご飴からあんず飴に変わった。
その隣の屋台には、水ヨーヨーがあった。


「桃、ヨーヨー釣りやらない?」

「いいわよ。久しぶりにやるわ」

「僕結構得意なんだよね」


屋台のおじさんにお金を渡し、釣り針をもらった。


「どれにしようかな?」


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