婚活
どういうつもりなんだろう。心の叫びが表情に出ているのか、和磨が微かに首を傾げたように見えた。この手を掴んだら、掴んでしまったら、その先に見えるものは辛い別れ……。たとえ和磨といえども、彼女の居る人と付き合ったところで虚しいだけ。彼女から和磨を奪うとか、アンフェアな事はしたくない。和磨のその手に触れたいと思っても、触れたら最後、離したくなくなってしまう。私って、こんなに臆病だったっけ?でも、もう周りが見えなくなるほど恋に一途になれる年齢じゃない。理性などと大袈裟なものじゃなくて、後先考えないで突っ走れる10代とはもう違う。和磨。気づくのが遅かったのかな?でも前の彼氏と付き合ってる頃や別れてからも、全然和磨の事なんて気にもしてなかったのに。正直、一人の男として見てなかった。あの日、あの海岸でふざけてキスをしてからかな?何か、和磨を意識するようになっちゃったのは。あの防波堤から見た夜の海で、和磨とキスを交わしてから……。
「和磨……」
「……」
和磨は黙ったまま、私の言葉を待っている。
「私、やっぱり彼女の居る人は、いくら和磨でも無理……だか……ら」
馬鹿だ。何で泣いたりしているんだろう?このままじゃ、和磨だって困っちゃうよ。やっぱり自分から嫌われよう。大きく深呼吸をして目を瞑り、覚悟を決めた。和磨に嫌われた方が私のため。
「私は和磨みたいに、その場限りとかで遊びで男とは出来ないから」
「誰が遊びだって言った?」
和磨。
「もういい。よくわかった」
「和磨」
和磨は差し出していた手をポケットに入れ、タバコを取り出し火を付けるとそのまま黙って歩き出した。和磨の後ろ姿を見ながら涙が溢れた。何でそんな事言うの?わからないよ、和磨。
私には、和磨の気持ちがまったくわからなかった。
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