婚活
加納さんにすべてを打ち明け、人生に於ける素敵な言葉を沢山もらってからの毎日は、和磨の事を想い悩んでいた今までが嘘のように充実している。というのは建て前で……。和磨は有休消化に入っていて、殆ど会社には来ていないので滅多に会う事もなかったから。その休み中も赴任先の学校の手続きなどいろいろあるらしく、裕樹のところにも顔を出す暇もないようだ。まぁ、もしかしたらあの彼女と会ったりしているのかもしれないが……。
そんな私はというと、結婚相談所には登録はまだしているものの、あれからすっかり冷めてしまってパソコン画面に向かう事も暇な時だけで、目の色変えて画面に食い入るように見る事もなくなっていた。元々の事の発端であった熊谷さんは……というと、和磨が有休消化に入っているのでとても忙しいらしく、朋美曰く、女遊びも終焉に近いんじゃないかとの事だった。熊谷さんには、ある意味感謝すべきなのかもしれない。熊谷さんとの事がなければ、和磨への自分の気持ちにも気付かずにずっと過ごしていたかもしれないし、心を入れ替えて一から出直す気にもならなかったかもしれないから。でも、もう熊谷さんとも関わるつもりも毛頭ない。
巷は、いわゆる師走でクリスマスとお正月ムードが迫ってきていて、何もなくても気ぜわしい。本当に久しぶりに、今夜はゆっくり三人での忘年会。仕事が終わってから、行きつけの居酒屋に集合した。
「今年も、あっという間だったねぇ」
「あぁ、また一つ歳を取る」
「婆臭い事、言わないでよ」
「でも事実ジャン」
「取り敢えず、乾杯!」
また一つ歳を取るかぁ……。
「朋美。結局、小林さんとはどうなったの?」
そうだ、由佳の言葉で思い出した。朋美はあの妊娠騒動以来、小林さんと極端に会う事を拒んで、朋美のそんな様子を不自然に感じた小林さんが、やっと朋美と会う事が出来た時にはもう朋美の怒りも収まっていたので、もう一度やり直そうか、どうしようかというところまでは由佳も私も聞いていた。
「小林さん?うーん……結局、蟠りは消えなかったかな」
そうなんだったんだ。小林さんとは、よりを戻せなかったんだ……。
「珠美の方は、熊谷はあれから何も言ってこないんでしょ?白石君の抜けた穴埋めで奴はそんな暇も今はないと思うけど」
「うん。すっかりご無沙汰って感じだし、万が一、また何か言ってきたとしても、もう何ですか?って感じよ」
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