婚活
何で和磨が来てるからって、私が降りて行かなきゃいけないのよ。裕樹の友達で……でも……私の彼氏。和磨は私の彼氏?
渋々、下に降りていこうとしたその時、携帯が鳴った。
―加納―
加納さん!
「もしもし」
「加納です。今、大丈夫?」
「あっ、はい」
「久しぶりだね。元気だった?」
「はい……。加納さんも、お変わりないですか?」
「あぁ、僕は相変わらずだから。電話したのは別に用事じゃないんだけど、どうしてるかなと思ってね」
加納さん……。
「加納さん。私……」
言葉に詰まってしまった私の電話越しの沈黙に加納さんは黙って待っていてくれたが、何と言っていいかわからず、言葉を選んでは消し去っているうちに加納さんが先に言葉を発した。
「沢村さん。今から会える?」
「えっ?」
「会って話しを聞こうか?」
「はい……。ありがとうございます。加納さんに……私も会いたいです」
「ハハハッ……。そう言ってもらえると嬉しいなぁ。それじゃ、この前の居酒屋にこれから僕も家を出るから、沢村さんも適当に来て」
「はい。私も今から出ます」
「それじゃ」
「あの……加納さん?」
「ん?」
「その……いつも……ありがとうございます」
加納さんに、急にお礼が言いたくなった。
「何?改まって。それじゃ、切るよ」
「はい。それじゃ」
電話を切って、部屋着からこの前の和磨とのデートに着ていた服に着替え、いつも癖で5cmぐらい少しだけ開けっ放しになっている部屋のドアを開けると、部屋の前に和磨が立っていた。
聞いてた?
加納さんとの電話の会話を和磨。聞いてたの?
和磨は黙ったまま、ジッと私を見ている。無表情だったが、呆れているような、嫌そうな……。そんな思いの内を、和磨の冷たい目が語っていた。
「出掛けるのかよ?」
「えっ?」
「バッグ持ってるから」
「う、うん。ちょっと……」
すると和磨は私の横を通り過ぎ、裕樹の部屋のドアノブを持った。
「あまり遅くなるなよ」
和磨は背中を向けたままそう言うと、ドアを開けて裕樹の部屋に入っていってしまった。
和磨……。
怒ってる?何か、素っ気ない冷たい言い方だった。やっぱり断って行った方がいいかな?私だって、もし和磨が女の人と会ってたらやっぱり気になるし……。悪い事をしてるわけじゃないんだから、ちゃんと和磨に断ってから行こう。
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