婚活
「飲もうか?」
「うん。今夜は泊まるって家にも言ってきたから、とことん飲むよ」
「アッハッハ……。珠美。やけ酒だけは、やめなさいよね。美味しいお酒でなきゃ、駄目だよ?もったいないから」
「ハッ!由佳。もったいないって……」
いつもの由佳らしさが出てホッとした。
「ドキドキしてさ。髪型とか何度も駅の鏡見ちゃって、デートの待ち合わせ場所に向かったりしてね……」
「ギャッハッハ……。由佳でもそんなウブな時があったの?」
「失礼ねぇ。最初からこれじゃ、可愛げないでしょう。でもね……だんだんそのときめきがなくなってきちゃうと、もう惰性でって感じになっちゃって遅すぎた春になるわけよ」
ときめきかぁ……。
和磨とデートしてた頃、ときめきってあったのかな?
「私、本当に和磨の事、好きだったのかな?」
「珠美?」
「だって、由佳みたいにドキドキしたりして、何度も駅の鏡とか見たりしなかったし、それに……」
「それに?」
「何か……いつも会っても食事して映画みたら、すぐホテルに行ってた」
でも本当はホテルに行ってた事だけが鮮明に思い出されて、会う度にというのがどうしても嫌だった。
エッ……。
嫌?
和磨とエッチする事が、私は嫌だった?
和磨の事は……嫌い……じゃなかった?
「由佳。本当に好きだったら、エッチするのって嫌じゃないのかな?私……和磨とは、どうしても会う度にとかが嫌で……」
酔った勢いで、そんな事を口走っていた。
「男と女は別の生き物だからね。でも、それだけの付き合いが嫌だっていう珠美の気持ちもよくわかるよ。それって、いつか飽きられて捨てられるとか、そんな将来的な事を悲観しちゃったりするのもあるんだよね。何で珠美は嫌だったの?」
「何でって……やっぱりそればっかりじゃなくて、いろんなところに出掛けたり、アウトドア的な事の方が私は好きだから」
「きっとそんな珠美を見て、益々、白石は不安になったんだろうね」
「和磨が不安になった?私のせいで?」
何で?
和磨の事を拒んだのは、一回だけなのに。
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