婚活
「珠美に拒絶されて、一層不安になっちゃったんじゃない?身体の繋がりだけがすべてじゃないって白石もきっとわかってるんだと思う。でも前にも言ったけど、自分の方が年下だって事に負い目を感じてるとしたら、いつも珠美をリードしていたいって自然に思ってたんじゃないの?でも珠美に拒まれて、白石自身もどうしていいのかわからなくて確かめたかったというか、エッチする事によって安心したかったんじゃないの?結構、男は単純だったりするし、時として子供みたいなところもあるから」
和磨は安心したかったの?
そのために、いつも私を求めてきたの?
「珠美。この前も言ったけど、珠美にはもっとこう……ドーン!と構えていてくれる年上の人の方が合ってる気がするんだけどなぁ……でもそれでも好きになっちゃったら惚れた弱みじゃないけど、自分の理想のタイプなんて木っ端微塵に崩れ去るんだけどね」
惚れた弱みか……。もしかしたら、自分から別れを切り出したくせに、和磨の事がずっとトラウマになるかもしれない。トラウマというよりこれから先、もう恋愛は上手くできないんじゃ……。
「加納さんは駄目?」
エッ……。
「珠美。加納さんと一緒に居る時とか、会った後とか、いつも穏やかな表情してたから」
加納さん。
久しぶりに加納さんの名前を聞いた気がする。
「加納さんはね……。今でも……別れた彼女の事を……」
「珠美?」
加納さんの気持ちが、何故か今の自分とダブってしまい泣けてきた。
「自分の気持ちに気付くのが遅すぎて……誰が一番大切だったのかを加納さんは、見失っていたんだって……」
私は……和磨にとって、どんな存在だったの?
「珠美。今夜は飲もう。泣いていたって始まらないよ?」
「うん……」
「過去を悔やむより、未来を悔やまないようにすればいいの。終わった事を悔やんだところで、何も始まらないでしょう?悔やむより、自分のプラスになる肥料にすればいいの」
「肥料?」
「そう、肥料よ。花はいつまでも自然に綺麗に咲いてるわけじゃない。ちゃんと肥料をあげて可愛がってあげてこそ、初めて大輪の花を咲かせるの。悔やんで泣いてばかりいたら、自分を虐めてるのと一緒でしょ?もっと肥料をあげて大切にしてあげれば、萎れてしまっていた花でもまた生き生きとするのよ」
「……」
和磨は、もう過去の男になってしまうのだろうか?
「珠美。まだ白石の事が好き?」
< 204 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop