婚活
由佳がコーヒーをひと口飲みながら、あたかも、何故それを早く言わないと言った風な表情を浮かべている。
「それが駄目なのよ。加納さんは、珠美がお気に入りなの」
「あぁ、そういう事。それじゃ、朋美は小林さんをもう一度観察してみるといいよ。初回には見えなかった部分も、二度目に会った時には見えてくるかもしれないでしょ? で……。珠美はその付き添いの男の事、どう思ってるの?」
朋美に集中していた由佳の視線が、急にこちらを向いた。
「どぉって……。そんな風になんて考えてもいなかったし、ただの付き添いだけで殆ど当たり障りのない会話しかしてなかったから、どんな人なのかもよくわかってないもの」
「顔は、タイプだった?」
加納さんの事は顔すらうろ覚えで、もう一度会えば思い出すだろう程度だ。
「朋美。ホントに私、よく覚えてないのよ。向かい合って話した事もあまりなかったから、 よく見てなかったし……」
すると、朋美と由佳が顔を合わせていた。
「でも、嫌いなタイプ……ではなかったのよね?」
「多分……」
好きなタイプかと聞かれれば首を傾げてしまうかもしれないけれど、あの時の印象からいって好意的に会話もしていたし、加納さんにマイナスのイメージは少なくともなかった気がした。
「可もなく、不可もなくってところなのね。珠美も、もう一度会ってみるいい機会だと思うよ」
それは、確かにそうなんだけど……。だけど私の頭の片隅には疑心暗鬼になったままだったけれど、熊谷さんの昨日の言葉がどうしても引っ掛かっていて素直に加納さんに行けない私がいる。
「実はさ、昨日告白みたいなのされちゃって……」
「告白?」
今度は朋美と由佳が、声を揃えて聞き返してきた。しかも大きな声で。
「誰に?」
そして間髪入れずに、朋美が私に問い質してきた。
「それが……。熊谷さんに……」
「熊谷?熊谷って、まさかうちの熊谷の事?」
ぎこちなく朋美に向かって頷いてみせると、由佳が隣りで溜息をついた。
「来る時は、そんなもんなんだよね。モテ期で、珠美も大変だ」
「だけど、半信半疑なのよ。熊谷さんって、彼女居る感じじゃない?前にみんなで飲みに行った時だって、居ると言えば居るとか、居ないと言えば居ないだとかそんな曖昧な返事してなかったっけ?」
「そうだった。朋美、そこのところはどうなの?」
私の代わりに、由佳が代弁してくれている。
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