婚活
結婚したいと思ってるのは、確か。だけど家に帰ったらご飯が出来てる暮らしから、早く抜け出したいとも思っていないところはやっぱ切羽詰まってないのかもしれない。痛いところを、突かれた気がした。
―僕は、そんな沢村さんの手助けが少しでも出来たらいいなとも思っています―
加納さん。いったい、何考えてるんだろう。
「珠美。飯冷めちゃうぞ。早くし……うわっ」
「キャーッ」
Tシャツを脱いで着替えていたところに、ノックの音と同時にいきなり和磨がドアを開けて入ってきた。
「な、何なのよ。出てけ変態!ノックしたら、返事するまで入ってくるなって言ったでしょ」
慌てて脱いだTシャツで、胸を隠す。
「あぁ、悪い。別に減るもんじゃないだろ?今日は、ネイビーか……」
「和磨ぁ!」
ドアを閉めた和磨に向かって、罵声を浴びせる。信じられない……。何で和磨なんかに、こういつもいつも見られなきゃいけないのよ。
気が重くなりながらダイニングに向かうと案の定、しれっとした顔で和磨が裕樹と笑いながら座っていた。
「最っ低!」
後を通る際、聞こえよがしに和磨に言ってやる。しかし、和磨はそんな私の声にもまるで無反応。不愉快この上極まりなく、さっさとご飯を食べて部屋に戻りパソコンの画面を開きながら携帯を充電器に載せようとして、朋美からのメールに気付いた。
―ちょっと早いかなとも思ったけど、小林さんとホテルに行っちゃった―
嘘……。
驚きを隠せないまま、メールの文字を追う。
―やっぱりこういう事も、合う、合わないってあるから実践あるのみと思ってさ。結果は、まぁまぁ。女は、そこそこ知ってる感じだったわ。珠美は、加納さんとどうだった?―
朋美……。
大丈夫なのかな。まだ会って2回目なのに、そんな深い関係までいっちゃって……。もし駄目になった時、どうするんだろう。
―私は、加納さんと海を見に行って来た。全然、他は何も進展ないよ―
それだけ打って、携帯の画面を閉じた。人は人、自分は自分。朋美の人生だから、とやかくは言わない。後悔だけは、して欲しくないから。でも私は……。どうなるんだろう。まるで他人事のように客観的に見てる自分が居て、それがまたジレンマだったりもする。理想は高く、されど現実は厳しく……。まさに、地でいってるよなぁ。

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