婚活
少し格好いいとか思ってた自分が、男を見る目がなかったみたいで、自分で自分に腹が立っている。
「良かったですね。これで、スッキリ出来たって事ですよね?また新しい出会いが、きっとありますよ」
「そうだな。それじゃ、もう失礼する」
エッ……。
それだけを言いに、わざわざ来たの?玄関まで熊谷さんを送っていきながら、何故それを今日言いに来なければならなかったのかと不思議に思っていると、靴を履きながら、熊谷さんが階段の上を見上げた。
「白石は、今夜泊まるの?」
「さぁ……。どうなんでしょうね。よくわからないです。アハハッ……」
正直、和磨が何考えてるのかもわからない。急に、裕樹の部屋に居るとか言い出すし……。そんな事を考えながら、外の門扉のところまで熊谷さんを送っていこうとサンダルを履いて後に続いた。
「コーヒー、ご馳走様」
「いいえ。何のお構いもしませんで」
熊谷さんが扉を閉めると、門扉を挟んで向き合った。
「長年、切り出せなかった別れを切り出せたのは君のお陰だと言ったのは、彼女より君の方が大切だと思えたからなんだ」
熊谷さん。何故そんな恥ずかしい事を、平気で言えるのだろう。でも、言われて嬉しい自分もいる。
「本気で、君が好きになったみたいだ」
「熊谷さん……」
門扉越しに引き寄せられ、抱き締められた。
「ハハッ……。嫉妬の視線が痛いな」
エッ……。
「君は君の考えがあるだろうし、もし婚活に疲れたら、いつでも待ってるから」
「……」
どうしよう。いつでも待ってるって、そんな事言われても困る。
「それじゃ、おやすみ」
「お、おやすみなさい」
自分勝手というか、言いたい事だけ言って熊谷さんは帰って行っちゃった。「いつでも待ってるから」だなんて、女にしてみれば殺し文句のようなもんだよね。狡いといえば狡いんだけど、何か憎めないというか……。私のために不倫にピリオド打っただなんて、それは女としてみたら嬉しい。だけど、そこまでされちゃうと少し気が引けるというか、そんな事された事もない私としては驚いているばかり。こんな事、初めてだし……。
本当に私のために熊谷さんは、不倫にピリオドを打ったんだろうか。
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