婚活
男の事情
偶然が重なっての事かもしれないので、話半分に聞いておいた方がよさそうかもしれない。玄関のドアを閉めて鍵を掛けると、二階から和磨が降りてきた。そうだった……。まだ和磨居たんだよ。
「口説かれ上手で、隙だらけだな」
エッ……。
和磨が玄関からあがった私にそう言いながら、リビングの方へと行ってしまった。
和磨?
そうだ。和磨だったら男だし、私と違った見方をするかもしれないからいろいろ聞いてみよう。婚活の傾向と対策を錬るには、一番歳も近いし参考になるかも……。ソファーに寝転がって新聞を読んでいる和磨に、何気なく話し掛けてみよう。きっと身構えて聞いたりしたら、煩がって答えてくれなさそうだから。
「和磨って、どんな女の子が好きなの?」
すると、読んでいた新聞の横から和磨が疑わしい眼差しでこちらを見た。
「いきなり何だよ。何?俺に惚れちゃって、好かれたいとでも思ってるとか?」
はぁ?
この減らず口を叩く和磨は、何とかならないものか。
「自信過剰もいいところね。違いますとキッパリ否定するわよ。婚活するにあたって、ちょっとレクチャーしとかなきゃいけないでしょ?いちばん歳の近いあんたが、手っ取り早いから聞いてるだけよ」

「じゃぁ、俺のなんて聞いてもきっと参考にならないぜ?」
テーブルの上に残っていたおせんべいを、ソファーには座らずその前に座りながらかじっていると、それを和磨が取り上げ食べてしまい、仕方なく立ち上がってテーブルの上のもう一枚おせんべいを取って床に座った。
「参考になるか、ならないかは私が決めるんだから。いいから教えてよ。どんな感じの女の子が好っていうか、一般的にどんな雰囲気の女の子に男って惹かれるの?」
「清潔感のある子とか?」
ふ~ん……。良く雑誌とかに書いてあるけど、やっぱりそうなんだ。
「それから?」
「俺自身は、それ故に魔女みたいに爪の長い女は御法度」
御法度って、和磨。あんたは、何時代の人間よ。それと同時に、自分の爪を見る。白い部分が見えないし……。短くて良かった。
「爪が長いと、やっぱり不潔に感じるものなの?」
「だから、それは俺だけかもしれないって言ってるジャン。ただ爪が長いと料理とか何もしてない感じがするし、料理にマニキュアとか入ってたりしたら嫌だろ?そういう事、想像しちゃうんだよ。男としたらさ」
< 59 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop