婚活
「あぁ……。確かに、女性は沢山いますよ。でも忙しくてそれどころじゃないっていうか、 要領が悪いのかもしれないんですけどね。社内だとやっぱりいろいろ不都合な事とかも 後々出てきますし、それより何より時間がないっていうのが本音ですかね」
時間がない?
「そんなに、お忙しいんですか?毎日、だいたい何時頃にお仕事終わられるんですか?」
何だか、質問攻めしてしまっているかな。でも、やっぱりいろいろ聞いてみたいという衝動に駆られる。それは、一種の興味本位かもしれないけれど。
「だいたい会社を出るのは、早くて21時とかですね」
「早くて21時なんですか。そ、それは大変ですよね」
いったい、家に帰ったら何時になるんだろう。
「大変というか、もう慣れてしまっているのでたまに早く帰れると、何となく変な気分で 落ち着かなかったりもするんです。ハハッ……」
錦織さんって、仕事好きなのか?
「そうなんですか。でもそうしたら、残業代とか凄いんじゃないですか?」
「いえいえ、頭打ちですから。1ヶ月、20時間以上は付かないので同じ事ですよ」
そんな……。
「男の独身が最近多いっていうのは、正直、出会いが少ないというのもあるんだと思いますが、時間がなくて気づけば30とか40になっていて、そうなると失礼ながらこういう場所でしか出会いのチャンスもなくなってくるんですよね」
「……」
「沢村さんには素の僕を知ってもらいたいと思うので、敢えて言わせて頂けばこういう場所で結婚相手を見つけるのが手っ取り早いって考えてる男は結構居ると思います。時間的余裕もないですから、相手も結婚相手を探している女性という事に限定されてきますしね」
何とも言えない気分だった。錦織さんの言っている事は、正直な思いで胸の内というか、自分の気持ちを話してくれたのはとても嬉しかった。だけど手っ取り早いとか言われてしまうとそういう男ばかりではないけれど、ここはそんな場所に思えてきてしまう。
「沢村さんは今、ご結婚されたい意思がおありですか?」
エッ……。
「ここに入会されたという事は、少なからず勢いとはいえ結婚相手を探されたいと思われての事もあるからですよね?」
錦織さん。
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