婚活
家に向かっていると、向こうから和磨とこの前見掛けた女の子が歩いてきた。何だか今日は、和磨に会いたくないな。多分、和磨は目が良いからきっと前から来る私に、すでに気付いているだろう。そうとは知らない女の子は、ニコニコ笑いながら和磨に話し掛けている。何も言わずに、通り過ぎよう。その方が、あの女の子も変な誤解をしないだろうし……。あと5m……3m……1m。
「よっ」
「……」
和磨の呼びかけにも、目を合わせずそのまま通り過ぎた。何でこんな態度を示してるのか、自分でもよくわからない。
「珠美?」
すれ違ったのは、ほんの一瞬。背中から和磨の声が聞こえたと同時に、先日キスを交わしていた女の子の声を初めて聞いた。
「和磨君。あの人と、知り合いなの?」
和磨君……か。
曲がり角を曲がった途端、走り出していた。何だか、走りたい気分だった。
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