婚活
正体
一歩、二歩と地面を蹴り始め、夢中で走ってる途中で道が歪んで見えてきていた。馬鹿みたい。何で泣いているんだろう、私。現実が厳しすぎから?初めての婚活に、失敗したから?何でだろう、胸が痛い……。
「珠美!」
エッ……。
その声にピタッと足を止め、後を振り返ると和磨がこちらに向かって走って来ていた。
和磨……。和磨に、泣き顔を見られたくない。急いで涙を拭ったが、また走るのも何だか逃げてるようで不自然なのでゆっくり歩きながら呼吸を整え、上を向いて涙を堪えて和磨が恐らく追いついてくるだろう時間を見計らっていた。
「珠美」
「何?」
平静を装いつつ、いつもと同じように和磨に返事をする。
「何で、素通りするんだよ」
走ってきた和磨が、息を切らせている。
「さっきの彼女は、どうしたの?」
「あぁ……。駅まで送ってくところだったから、もう駅だったしあそこで別れた」
はぁ?馬鹿じゃないの?
何でまた、彼女とあそこで別れて戻ってくるのよ。
「改札口まで見送ってあげなきゃ、可哀想じゃない」
「珠美?」
横に居る和磨が疑問符そのままの表情で、私の顔を覗き込んだ。
「ごめん。今、誰とも話したくないから……。行くね」
前を向いたまま和磨にそう告げ、歩調を早める事もなくそのまま家の方へと歩みを進める。正直、本当に今は誰とも話したくなかった。結婚って、私にとって何なんだろう。頭の中は、そんな思いでいっぱいだった。
「ただいま……」
いつものように、母親がリビングから顔を出して迎えてくれる。この温かさが何とも今の私には、余計堪える。
「おかえり。今日は早いのね。これからご飯だけど、食べるでしょ?」
「うん」
ピンポ~ン。
インターホンが鳴ると同時に玄関のドアが開き、靴を脱ぎながら後を振り返ると和磨が立っていたので、バッグを持ってそのまま階段を上り始めた。
「あらっ、和君。いらっしゃい」
「こんにちは。裕樹居ます?」
「部屋に居るわよ。あっ、ちょうど良かった。裕樹の部屋に行ったらご飯だから声掛けてきてくれる?和君も、一緒に食べましょう」
「はい」
階段を上っている途中で、後から和磨が上ってくる足音がしている。何で来るのよ。まぁ、いつもの事か……。三連休だし、裕樹とまた夜通し話しでもするのかもしれないな。そんな事を考えながら部屋に入り、今日はドアの鍵を掛けた。
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