婚活
はぁ……。
何だか心臓によくないよ。しかし、私がこんなにドキドキしていても、和磨は平然と普通に運転席に座り、エンジンをかけ、ギアをバックに入れた。助手席のシートの端を左手で持ちながら、車をバックさせている和磨の顔を間近で見て、その仕草に男を感じてまたしても身体が固まってしまう。
「何だよ?」
ジッと見つめていたので視線を感じたのか、和磨が車をバックさせるとギアをドライブに入れながらこちらを見た。
「べ、別に」
「何?いい顔だから、惚れ惚れするだろ?」
はい?
「自惚れ過ぎ」
「素直に認めりゃいいのに」
ここまで来ると、和磨のナルシストぶりも重症だよ。でも、不意に先ほどキスした事が思い出され、それからは無口になってしまっていて、和磨も独り言のように何か言いながら 運転していて、別段話し掛けてくる訳でもなかったが、暫くすると、海岸線を走りながら急にお腹が痛くなってきてしまった。ずっと防波堤に座っていたから、冷えちゃったのかな。どうしよう……。一つのお腹の痛さの波が治まり暫くは落ち着いていたが、また痛みが押し寄せてきて、思わず表情に出てしまい、それを和磨に悟られまいとしたが、そこはそういう事に敏感な和磨。すぐに気付かれてしまった。
「珠美。どうかした?」
恥ずかしいけれど、正直に答えた。
「和磨……。お腹痛い」
段々、お腹が痛くなる感覚が短くなってきていて、トイレに行きたくなってきてしまった。
「大丈夫かよ。トイレ行くか?」
言いづらい事を和磨が先に言ってくれたので、俯いたまま黙って頷いた。
「トイレか……。この時間、やってる店は……。いいや、ここで」
「えっ、何処?」
和磨がウィンカーを出して入った場所。そこは、ラブホテルだった。
嘘……。















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