婚活
自立
和磨が駐車場に車を停めると、すぐにシートベルトを外し運転席から降りて助手席のドアを開けた。
「ちょっ……。か、和磨」
「お腹痛いんだろ?この辺は、防犯防止でコンビニは0時までしかやってないんだよ。背に腹は代えられないだろ?ほらっ、珠美。降りろ」
和磨が助手席のシートベルトを外し、私の腕を掴んで車から降ろすとワイヤレスキーでドアをロックした。入り口の自動ドアのセンサーが感知してスッと開いてしまう。
エッ……。
和磨が不意に私の手を握ったので思わず和磨の顔を見上げたが、和磨は前を向いたまま
私の手を引いて中に入っていった。
うわっ。
入った途端、目の前のパネルに仰け反りそうになる。何で和磨とホテルに……。
「どの部屋にするかなぁ……」
あまり迷う事もなく和磨がボタンを押すと部屋の鍵が出てきて、和磨が鍵を手に取った。しかし、和磨の行動に何かを言う余裕は、今はなかった。
お腹……痛い。
「こっち」
和磨に言われるまま手を引かれ、エレベーターに乗って三階で降りると、左右を見渡し、ドアの上が点滅している部屋の前に和磨が向かい、鍵を開けてドアを開いた。まさか、和磨とこんなところに来るとは、思ってもみなかった。
「ほらっ、珠美。早くトイレ」
「う、うん」
和磨に背中を押され部屋の中に入ると、ラブホテル独特の部屋の内装と造りに目を見張ったが、でも今はお腹が痛くてどうしようもなくそれどころじゃない。トイレに駆け込み、便座に座りながら痛みの中にあっても少しホッとしていた。良かった……。
痛みも治まってトイレから出ると、和磨の姿はなく、ふと音のする方を見て声も出ず、右手で口を押さえながら卒倒しそうになって、とにかく今は視界をすべて遮りたくて目の前のベッドにダイブした。
嘘だ……。
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