婚活
か、和磨の裸、見ちゃったよ。後ろ姿だったけど。な、何やってんのよ、和磨。ガラス張りになっているバスルーム。ラブホテルだから仕方ないといえば、仕方ないんだけれど、何で今、シャワーなんて浴びてるのよ。ベッドの上に俯せに寝ながら両手で胸を押さえているが、心臓がバクバクいっている。何で私、お腹なんか痛くなったのよ。こんなところに和磨と入っちゃって、しかも和磨はシャワー浴びてて、その裸を見ちゃった……。脳裏に和磨の裸体が焼き付いている。あぁ……どんな顔して和磨と話せばいいのよ。小刻みに 首を振りながら、必死に残像を払拭しようと試みる。
「何やってんだ?首振り人形か?」
うっ。
和磨に見られた?あっ……。慌てて今の状況を考え、飛び起きる。
うわっ。
すると和磨がバスローブ姿で、バスタオルで髪を拭きながらベッドに座っている私の横に座った。
「な、何よ?」
「お湯溜めてきてやったから、珠美も風呂入れ」
はぁ?
「何、馬鹿な事言ってんのよ。ふざけないで」
和磨の言葉に驚いて、思わず頬を叩いてしまった。
「痛ってぇ。何すんだよ」
いきなり和磨が私の両手首を持って、ベッドに押し倒した。
「ちょ、ちょっと和磨。離して!」
和磨の力が強く、起き上がろうとしても起き上がれず、ベッドに押し付けられている。手首が痛い。
「身体が冷えて、お腹痛くなったかもしれないだろ?風呂に浸かれば温まるし、少しは良くなるかもしれないと思って言っただけだぞ、俺は」
「……」
「俺が今、シャワー浴びていたのだって、お前がトイレに入ってて俺が部屋に居たんじゃ、落ち着かないと思ったから」
和磨がそこまで考えてくれてたなんて……。勝手に不純な事を想像して、和磨がただエッチな事しか考えてなかったと思ってた自分が恥ずかしい。
「ごめん、和磨。叩いたりして……」
「別に」
タバコに火を付けながらツンとした態度でそう言うと、和磨が私を起こしてくれた。しかしそう言われると、せっかく和磨が気を利かせてくれたのにこのまま帰るのも何となく気が引けて、お風呂に入って温まりたい気もしてきた。でも……。
「和磨」
「何だよ」
タバコの煙で煙たそうな顔をしながら、和磨がこちらを見た。
「お風呂に入って温まりたいけど……。でも……」
お風呂の壁がガラス張りで、モロに見えてしまう事がどうしても嫌だ。
「カーテン引けばいいだろ?」
エッ……。
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