君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「いくつかの地方銀行と信用金庫がまとめてウチのメインバンクの傘下に入ります。もちろん、メインバンクは原田頭取のところです」

 「そうか。入札後に金が周りにくくなるかもな。一部地域で」

 「うまくいくかはわかりませんが、小さなアリでも集まれば大きなゾウの足を一本折るくらいはできるでしょう」

 「なるほどな。で、副社長の匠君をスキャンダルに巻き込むのか?」

 「ええ。高校時代の話とか。さくらには兄さんから確認してあります。嫌がってましたけどね。でも今となってはさくらは幼馴染みとはいえ兄の嫁です。石井コーポレーションのためならなんでもやるでしょう」

 「まあ、さくらさんが高校時代に匠君から振られてあんなことになった話は隆に嫌というほど聞いている。小さい頃からさくらさんひとすじだったしな」

 匠さんを一時的にでも失脚させられれば、石井コーポレーションの将来には大きな利益がある。
 
 匠さんの手腕はかなり有名になりつつある。

 俺がこの業界で足場を作る間、静かにしていてもらえれば何よりだ。

 ついでに、彼女も頂くとするか。
 
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