君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「副社長。ここで待っていれば現れますよ、間違いなく。いいたくないですが、古川さんが一番の泣き所ですから、ふたりとも」

 確かにそうだ。だが、ここで言い合いもできない。

 「匠様。会社に戻りましょう。これから来るであろう石井取締役との関係も、彼女の意思が必要です。決断は彼女がすべきですから。身体を壊してまでする仕事とは思えませんし、彼女も考えるでしょう」

 「おいていくのか?」

 「彼女は副社長が病院に連れてきてくれたことはわかっているはず。メールをいれておけば大丈夫でしょう。賢い人です。すぐに理解します。それに、石井取締役がすぐ来るに違いありません。手厚い看護を受けることは想像に難くありませんよ」

 遙のおでこにキスをひとつ落とす。

 必ず守る。

 そう誓った。
 
< 144 / 274 >

この作品をシェア

pagetop