君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「……もしかすると、弘取締役のせいかもしれない」
 
 「え?」
 
 「匠さんが前に言ってたの。専務と取締役は高校時代、部活も一緒でよく知っているけど、専務は自分を敵視してるって。おそらく、弘取締役に利用されたのかもしれない」
 
 「それにしたって……」
 
 「時間がないわ。後で情報を収集して、分かり次第連絡して」
 
 「わかった。遙、顔色悪い。無理しないでね。何かあったら合図してね」
 
 「ありがとう」

 取締役室に戻ると、すでにボスは席に座っている。

 「おはよう。遅かったな」
 
 「おはようございます。今日のスケジュールを確認させてください」

 「……さすがだね。動揺せずいつも通り」
 
 「これが私の仕事ですから。おわかりなら、どうしてこんなことを」

 「ひどいな。まるで僕がやったみたいに」
 
 「違うんですか?専務の奥様まで巻き込んで」

 弘取締役は私を見て目を見張った。
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