君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「皐月が会うくらいだから、好きになったのね」
 
 「うん。最初は軽い人かと思ってたんだけど、誠実というか隠し事しない人なの。御曹司だし、私はやめようと思ってたんだけど、会うたびに楽しくて。本当に悩んだよ」
 
 「そう。幸せなのね?」
 
 「うん。今は幸せ。まめに連絡くれるし」
 
 そうか。取引のことは伏せておこう。
 皐月のことだから原田取締役から聞いているかも知れないけど。

 「ねえ、皐月。匠さんも蓮見商事なの?」
 
 「……」
 
 「皐月?」
 
 「……ううん。違うみたいよ。同じ会社ではないって言ってた」
 
 「じゃあ、どこの会社なの?」
 
 「それは、ごめん私も知らない」
 
 「え?」
 
 「それより、遙仕事忙しいんじゃない?大丈夫?」
 
 何か変。話をそらそうとしてる?
 
 「……ううん。なんとかやってるから大丈夫」
 
 「大変なことや、わかんないことは何でも聞いてね。前からいるから私の方が相談に乗れると思うの」
 
 「ありがとう。疲れてるとこ電話ありがと。またね」
 
 「……うん。じゃあ」
 
 そう言うと、電話が切れた。

 
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