君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「匠様が女性のことで私に頼み事をしてきたのは初めてです。嬉しかったのです」
 
 「そうなんですか?」
 
 「大切にしたい人だと……。その意味は無論ですが、お立場上色々気にすることもあり、かなり厳重に気をつけておられます。古川様の立場と匠様の立場がなかなかすんなりいかないとか。でも、大丈夫です。こういったことは本人次第ですから。匠様にもそうお伝えしました」
 
 「匠さんにとって、柿崎さんは助言ももらえる本当にお父さんのような方なんですね」
 
 「……おこがましいですが、古川様も匠様のことで何かお悩みがあってご本人に言えず困るようなことがあればご相談ください。悪いようには致しません」
 
 なんて、出来た人なんだろう。

 親以外でこういう人がいるなんてうらやましい。
 
 「ありがとうございます。よろしくお願いします」
 
 話しているうちに着いてしまった。
 
 エレベーターの場所を教えられ、裏に回ると店の担当者が確認してくる。
 
 すぐにエレベーターに乗せられてそのまま上がると、部屋がひとつ。

 ノックをしてはいると、彼が座って待っていた。

 「遙。大丈夫だったか?」
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