君がたとえあいつの秘書でも離さない
「先ほど、話したように弘君がこの間の件を探ってたどり着いたということは、相当警戒しているな。石井コーポレーションをウチを超える会社にしたいと高校時代から言っていた。兄の隆は冗談としか思っていなかったようだが、この間言っていた部活でも弘君の手腕は飛び抜けている。隆も、現社長もおそらく弘君に頼りきりだろう。とうとう、取締役になった。これからが勝負だ」
「そうなんですね。今日の取締役は怖かった。私を囲い込むように、まるで見ていたかのように。私が匠さんを見ていたのをずっと観察していたんだと思います」
「俺を見てた?」
「……カフェで待っていたんです。綺麗な秘書の方と降りてこられて、受付のお客様と上がって行かれましたよね?」
「……遙。そんな前からいたのか?何で連絡してこない」
「忙しくて、遅くなるんだって分かってましたから」
「遙、約束だ。いいか、俺に遠慮はしないこと。それから、俺が何を決断しようと、心配するな」
「信じているので、大丈夫です。でも、私も匠さんを守りたいの。だから私のせいでどうにかなるのはイヤなの」
匠さんは私のほうへ来ると、ぎゅっと抱きしめた。
「聞いてくれ。君に何かあったら俺はどうなると思う。それこそ、ブレーキがきかなくなって、会社ぐるみで復讐するかもしれないぞ。そうなる前に止めさせてくれと言っているんだ。わかったか?早めに連絡してくれ、いいな」