雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
6 新たなる覚悟
誰もいない暗い部屋でうずくまる。
また、スマホが振動する。
その電話に出るわけには行かない――。
さっきまで何度も聞いた振動は、今度はすぐに途切れた。おそるおそるスマホを覗く。それは電話ではなくメッセージを受信したものだった。
"今、家の前で待ってる。雪野が出て来てくれるのを待ってるから"
え――?
そっと部屋の窓から下をうかがう。創介さんはこの場所を知らないはずだ。いつも敷地外の離れたところで降ろしてもらっていた。
それなのに、眼下に佇む創介さんが視界に入る。
どうして――?
その姿を見つめていたら、創介さんがこちらを見上げてきた。慌てて壁に体を隠す。
二月の夜はとても冷える。あんな場所に、創介さんをずっと立たせるのか。いろんなことが脳内を駆け巡り、そして決心する。
そうだ。私がすることは、何としてでも、創介さんと離れることだ――。
「……来てくれたんだな」
「こんな真冬の夜、外にいたりしたら風邪をひきます」
私は表情を強張らせたまま、そう言った。創介さんは、河川敷で会った時と同じ、スリーピースのスーツ姿だった。
「雪野、もう一度話をさせてくれ」
そう言いながら、創介さんが私の元へと駆け寄って来る。
「ここは冷えます。うちに、どうぞ」
「でも、おまえの家族がいるだろう……?」
「今、母も弟も家にいないんです。だから、構いません」
そう告げると、さっさと創介さんに背を向けて明かりのほとんど届かない階段を上って行く。