雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
帰りの新幹線は、どことなく寂しい。
車窓が、美しく雪を纏ったものから、白が消え次第に建物が増えて街へと戻って行く。その変化が、現実へと帰るのだと私に訴えて来る。いつまでも隠れていられるわけでもない。込み上げる寂しさは確かに私の中にある。
夢を見たせいでより現実が鮮明になったのだとしても、それでも夢を見られた時間をなかったことにはしたくない。
たとえ、この後の現実が辛くても、夢は夢で大事な思い出だ。
「創介さん……?」
二人がけの席に隣り合わせで座っていた。肩に重みを感じて隣を見てみると、創介さんが私の肩に頭を預けて目を閉じていた。
寝てる――?
私の手を握りながら、微かに寝息を立てていた。そんな創介さんを見ると、思わず口元がほころんでしまう。
私も、創介さんの寝顔が見れますね――。
寝ているのをいいことに、握りしめられていた手のひらに力を込めた。
創介さんだって疲れているに決まっている。平日は遅くまで働いて、土曜日の朝は早くから私の家の近くまで迎えに来てくれた。創介さんはこの週末ほとんど休めていない。
ゆっくり、寝てくださいね――。
寝顔をじっと見つめる。
真っ直ぐに上がったしっかりとした眉。険しい眉間と筋が通った鼻と、引き締められた唇。
一見、とても冷たくて怖い人。でも、それだけじゃない。私にこんな夢を見させてくれる優しいところもある。
創介さん、本当に優しすぎます――。
その優しさは毒にもなる。
でも、彼を好きな私は、それが優しさでもやっぱり嬉しい。
短い髪に頬を寄せる。
こんな時間をくれてありがとう――。
視界に入る車窓には、見慣れた風景が広がり始めていた。