大切なもの


計画当日。


誠は9時出勤だと言っていたので、家には直子1人。


婚約者とは地元の駅で待ち合わせをしている。


駅まで歩いて10分。

マンションの鍵をリビングのガラステーブルに手紙と一緒に置き、部屋を出た。

いくらか、歩くスピードも増す。


駅に着き、予め購入していた地元までの片道切符を自動改札機に入れた。


ホームに出て、やっと一息ついた。


"うまくいった。"


携帯も今頃、婚約者が解約している。

誠とは、もう会う事もないだろう。


安堵感が体に充満して、直子はホームのアナウンスを聞き、自分が乗る特急列車の到着を待つ為に先頭に並んだ。









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