大切なもの


特急列車がホームに入る事を告げるアナウンスを耳にした直子は列車が来る右側に目を向けた。


その瞬間───


直子は背中を誰かに押され、ホームから線路に落とされた。


周りが騒然としている中、全てがスローモーションとなり、直子の目に映った。


"何で誠がココに…?"



次の瞬間、列車のブレーキ音が近づいてきたのがわかった。

ホームに立つ人々が悲鳴を上げたのか…列車のブレーキ音で何も聞こえない。


そして、直子の目の前は暗闇に閉ざされた────



大騒ぎになっているホーム。

次々と駅員が集まって来た。

遠くで救急車のサイレンも微かに聞こえる。


改札へ向かう階段を降りながら誠は顔の筋肉を緩めた。


「直子は僕の物なのに…違う奴の所に行ってしまう位なら…僕がコノ手で…ははは…ははは…」


誠は改札を出て直ぐに表通りの車が行き交う車道に歩道橋から身を投げた────





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