これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
そんな男の子は、赤色の私とは違って青色のネクタイをしていた。
「…教室に、忘れただけ、です」
「あー、じゃあこれ使います?」
「え…」
「俺の折り畳み。普通にでっかいの置き傘にもしてたんで、ちょうど2個持ってて」
差し出されたのは紺色の折り畳み傘。
それくらい、それくらい、私はひどい顔をしているのかもしれない。
見てられないような、つい声をかけてしまうくらいの。
たぶん、可哀想な顔ってやつ。
「ナツくーん、かえろー?」
そのとき、少し遠くから甘い声が伸びてくる。
こんなふうに私も誘うことができたなら何か違っていたのだろうか。
どんなものに対しても比べてしまえる気がする、今なら。
そして悲しくなって自爆するの。
「じゃあこれ、貸します」
「え、ちょっと、でも…」
「明日の放課後、屋上に持ってきてください」
私に無理やり渡してからそう言うと、次に彼は雰囲気を変えた。
妖艶というか、意味深いものに。
「面白いもの、見せてあげるから」