これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




キッチンに入ったのは私と同じ年齢の他校の男の子で、ホールには1歳年下の女の子。

そんな今日は、マネージャーである女性スタッフと新人の子、そして私の3人がキッチンを回す。



「あのー、ミートソースパスタまだですかー?お客様を待たせちゃってるんですけど…」



厨房を覗きに来たのは、接客用の制服に身をつつんだ新人の女の子、山内(やまうち)さん。

まだ出勤日数として見れば1ヶ月も経っていないというのに、ひとりでホールを任せることができるほどの期待のルーキー。


先輩スタッフの全員が「あの子はできる」と、口を揃えて言っていた。



「えっ、一ノ瀬さんパスタできてるよね?」


「いやっ、いまピザが完成したところで…」


「うそっ、そのオーダーさっき取ったばっかじゃん!すぐパスタ作って!!クレームきたら店長がうるさいんだからっ」


「は、はい…」


「どうしてちゃんと確認しないの!?いろいろ遅いのよもう!!」



感情的にぶつけられて、余計に私のなかに焦りが生まれる。


とりあえずはこのピザを提供してもらったほうがいいんじゃないか。

いやでも過去にも似たようなことがあった際、お客さんからクレームが届いたことがある。



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