これが恋だなんて、知らなかったんだよ。




「さくの、桜乃?聞いてる?」


「っ!あっ、うん、えっと…」


「明らかに元気ないけど大丈夫…?バイトとかで何かあった?」


「…だい、じょうぶ」



このことだけは誰にも話すことができない。

私のなかで消すしかできない。


勝吾くんのことで苦しい思いをしたときのように、こればかりは時間が解決してくれるはず。


でも、本当は、勝吾くんのつらさを緩和させてくれたのだって、いつも三好くんだった。



「いるわけ…ないよね」



メールも電話もできない。

もしかするとメッセージアプリだってブロックされているかもしれない。


多目的室、屋上。


いつも顔を合わせていた場所に向かった放課後、そこには誰の姿もなかった。



「遅いよ一ノ瀬さん!遅れるなら連絡してって言ったよね?」


「…すみません」


「はやくキッチン入って!今日は新人くん含めて3人で回さなくちゃなんだから!」


「はい…」



そしてバイトでは、夏休みに新しく2人の高校生が入った。

ホールにひとり、キッチンにひとり。



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