これが恋だなんて、知らなかったんだよ。
はっと、気づく。
そうだ、この子だって同じなんだ。
この現実を前にしているのは私だけじゃない。
でも、どうして、私たちがここまで苦しまなくちゃいけないの…?
「……くやしい…っ」
「その悔しさは俺としか晴らせないけど。
…どーする?」
「───…」
ルール1. 浮気した“ふり”をすること。
ルール2. ただし優先順位は本当の恋人。
ルール3. 絶対に本気になってはいけない。
これはあくまで逆転劇をするためのゲーム。
「じゃあ今日から俺たちはある意味、恋人同士ってことで」
「っ…!」
俺たちは見られていい、そのほうが面白くなるから───そう言うように抱きしめられた腕のなか。
硬直する私の身体をほぐすように、というよりは。
泣いている私をなぐさめるように耳たぶに唇が触れた。
「あんたも俺を利用すればいいし、俺もあんたを利用させてもらうから。…よろしくセンパイ」
1年3組、三好 奈都(みよし なつ)。
今日から彼は私の、もうひとりの彼氏。