乙女戦隊 月影 〜恥じらいの戦士〜
「戦え!行け!乙女レッド!」

あたしの後ろに、すばやく隠れたおっさんは、背広の男を、あたしの肩越しに睨んでいた。

「な、何?」

もお〜すべてが理解できない。


「乙女レッド!その力見せて貰おうか!」

背広の男は、持っていた鞄からある物を取り出した。

「表は、普通のセールスマン!しかし、その実体は!怪人セールスマン!」

「いっしょかい!」

思わず、突っ込んでしまった。


「いっしょではない!表と裏の違い!思い知らせてやろう」

セールスマンが取り出したのは、ある教材だった。

その教材に、セールスマンが瓶から粉を振り掛けた。

すると、教材から黒い文字の大群が飛び出し、

あたしの全身に絡みついた。

「え!」

あたしの目に、数列が並ぶ。

「乙女レッドよ!この計算を解かなければ、お前はこの攻撃から逃れることはできないぞ」

数字の束が、あたしの全身を締め付ける。

「きゃ…」

と悲鳴を上げようとした瞬間、数字の大群は消滅した。

「あれ?」

消滅した数字達に、あたしは驚いた。


「ま、まさか!解いたのか!」

セールスマンも驚いていた。

「あり得ない!」

攻撃を受けた瞬間、あたしから離れたおっさんも驚いていた。

「乙女ソルジャーが、数学をできるはずがない!」

「どういう意味よ!」

あたしは振り返り、おっさんを睨んだ。


「解けたとしても、早すぎる」

男は、手にしていた教材を確認した。



「あれくらい!何とか解けるわよ!ちょっとだけ焦ったけど…」

冷や汗を脱ぐおうとするあたしに、

セールスマンの叫びが届いた。

「間違った!こ、これは…小学五年生のドリル!」

「え?」

セールスマンが持っていたのは、小学生の教材だったのだ。

「こ、これではない!」

セールスマンはドリルを投げ捨てると、鞄の中を漁った。

「ない!ない!ないいい!」


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