乙女戦隊 月影 〜恥じらいの戦士〜
朝礼が始まる前の一年の教室に、

突然九鬼が入ってきた。

「生徒会長!」

教室内に、緊張が走る。

「何かあったのか?」

ひそひそ話の中、生徒の目も気にせずに、

九鬼は蒔絵の席目指して、歩き出す。

「花町さん!」

クラス中の注目の中、九鬼は蒔絵の真横で立ち止まり、

「あなたに、確かめたいことがあるの」

九鬼が話しかけても、携帯をいじることをやめない蒔絵を見下ろし、

「昨日撮った写真を魅せて、欲しいの」

「は〜あ?」

蒔絵は、九鬼を見上げ、首を傾げた。

それだけの動作をした後、蒔絵はまた携帯に目を落とした。

少しいらっときたけど、生徒会長たるもの…それくらいで、キレてはいけない。

九鬼は冷静に、口調を荒げることもなく、言った。

「教室内での携帯の使用は、禁止されています」

九鬼は手を差し出し、

「携帯を没収します。放課後、生徒会室に取りに来てください」

口調は変えなかったけど、威圧的ではあった。


「はあ〜?」



無理矢理、蒔絵から没収した携帯を、悪いと思いながらも、九鬼は生徒会室に戻ると、昨日の撮影記録をチェックした。


「やっぱり…」

九鬼は画像を確かめると、携帯を閉じた。

破壊された窓の画像が残っていた。

しかし、登校時も確認しに行ったけど…破壊された形跡はない。

「復元したとかじゃないわ…そんな次元じゃない…」

敵は一瞬で、直せる能力を持っていると考えられた。

「恐らくは…魔将軍ビューティー…」

底知れぬ敵の能力に、九鬼は携帯を持つ手に、汗が滲んでくるのに気付いた。


「御姉様」

その時、後ろから声をかけられた。

不意をつかれて、九鬼は一瞬身構えながら、振り返ってしまった。

「如何なさいましたか?」

扉の前に、副会長である桂美和子が、立っていた。

訝しげに、首を傾げる美和子に、九鬼は緊張を解き、微笑んだ。

「何でもないわ」

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