神殺しのクロノスタシスⅤ〜前編〜
Ⅶ〜前編〜
―――――――…夢を見ていた。

かつて私がいた、強制収容所と呼ばれる場所の夢。

夢の中では、驚くほど世界が灰色に見えて、私は目が悪くなってしまったのかと心配になる。

ここにいた頃は、私の目に映るものは、全部灰色に見えていたってことなんだろう。

その次に、収容所を出て、叔母と名乗った人の家に連れて行かれたときの夢を見た。

それはまるで、切り取った映画のワンシーンのようだった。

ここも、相変わらず灰色の世界。

私にとってこの豪奢な家は、強制収容所と何ら変わらない場所だった、ってことなのかもしれない。

更に、場面が変わる。

次もまた、灰色の世界。

私を東方の辺境の地に連れ去り、生き神と称えて私を祀った村だ。

ほんの僅かな時間しかいなかったけど、ここは私にとって、とても辛い場所だった。
 
…でも、この場所は長くは続かない。

だって、私は今、ここにいる。

灰色の世界じゃない、光彩に満ち溢れた美しい世界に…。

…いる、はずなのに。

「…?」

場面が移り変わる。

そこは私がいる、綺麗な世界ではない。

収容所みたいに、あらゆる汚らしいものが溢れているようなことはない。

叔母の家みたいに、仮初めの豊かさに囲まれているようなこともない。

東方の村みたいに、理解不能な信仰に心酔しているようなこともない。

…じゃあ、ここは何処?

目の前に、私と同じくらいの歳の女の子がいた。

それはまるで、私とそっくりな…。

そっと、彼女に手を伸ばそうとした…。





…そのとき。




「ベリクリーデ!起きろ」

強制的に、現実に引き戻された。
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