幻が見える彼女
普段、水か酒しか飲んでいない彼らが炭酸に驚く姿を想像して笑えば、風に揺れた私の髪を菅原が優しく掴んで微笑んだ。
「笑うと本当綺麗だよな。お前」
『そんなこと言われたことないな、ありがとう』
「!そう、かよ」
そう言ってから、くるりと私に背を向け黒板の方を向く菅原にホッとしながら、少し早くなった鼓動を落ち着かせた。
距離感がおかしいのよね、菅原は
…本当、たまにびっくりする
軽く息を吐き出して、私も先生が立つ教壇の方を向けば、
転校生…?
先生の隣に知らない男の子が立っていたのだ。
刹那
不思議な雰囲気の彼に釘付けになった。
何か、感じる
なんだろう、この何とも言えない…
もしかして、彼、人ではない??
そう少し恐さを感じながらも、彼の方から目が離せない。
「今日からこのクラスの仲間になる転校生の橘冬弥くんだ」
「よろしくお願いします」
「席はそうだな…初音の隣、空いてたよな?」
「空いてます!」
「じゃあ、あそこに座ってくれ」
そう先生が指示し、こちらに歩いてくる彼。
というか、なんで私が話しかけられたのに菅原が返事してんのよ
振り返り少し口角を上げた菅原に、少し苛ついて肩を軽く叩いた。
空いてる席なら廊下側にも1つあるのにと息を吐き出せば、隣の席についた転校生くんが私に笑いかける。
「橘だ。よろしく…初音、さん?」
『うん、合ってるよ。よろしくね』