幻が見える彼女
きっと数日したら、私に笑いかけてくれることなんて無くなるだろうな
そう思いながらも言葉を返せば、窓枠の方にトンッと音がしてそちらを向いた。
妖達が戻ってきたんだろうなと思いながら、首を橘くんとは別方向へ回す途中、違和感を感じる。
あれ?橘くんも窓の方見てる…?
「戻ったぞ!飛和!」
「はやく味見させてくれ!」
気のせい?
そう思いながらも、私の机の上に飛び移った身長30センチ程の彼等に微笑めば、差し出してくれている彼らサイズの器にコーラを注ぐ。
人の飲み物や食べ物を妖の器に注ぐと、妖が見えない人には途中でその飲み物や食べ物が消えてなくなったように見えるらしい。
菅原で実験済みだ。
私の机の上を見つめる橘くんも、この消えていくコーラを見ているんだろうな、もし本当に人間なら、なんて考えていれば、
「んむっ!」
「く、口の中がパチパチと、うわっ喉の奥まで刺激されておる!」
「新しい甘さが癖になるな…もっとくれ飛和!」
それぞれ感想を言いながらも、喉を押さえたり、パタパタ走り回ったりする姿に思わず、
『「可愛い」』
……!?
『い、今……』
「ははっ、もっとコーラ注いでやれよ」
隣の橘くんが、小声で私にそう言ったんだ。
その小さな声は、前の席の菅原にも聞こえていないようで、目を見開いたまま、再び橘くんの方を見てしまう。
橘くんも見える人なんだ…
…いや、人なのかな?
「ほら、待ってるよ」
『!…気に入った?これ』
「あぁ!礼を言うぞ飛和。
そちらの少年と今、目が合った。
我らが見える人の子が、この学校とやらにもう1人いるとは」
「おお!見えるのかお前!名を教えろ!」
「橘冬弥だ。
…妖に名前を教える日が来るとはな」