再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
「のどかちゃん、嬉しいよ」

「いいんですか? 迷惑じゃないですか?」

「全然。むしろ楽しみになった」

笑顔の彼に釣られて私も顔が綻ぶ。
私たちはスマホでお互いのシフトを確認して日にちまで約束した。
多分この流れで決めないとお互い連絡せずに話が立ち消えになるのでは、と思った。だから彼が日にちを決めようと言ってくれたことが正直嬉しかった。
その後も彼とは話が尽きることはなく、楽しくて朝を迎えてしまった。

「おはよ」

キッチンに橋口くんが現れて、私たちはものすごく驚いた。
物音にも気が付かないなんて、どれだけ夏目さんとの話に没頭していたのだろうか。

「おはようございます……」

「よく寝たか?」

「ああ。ってか、ふたりとも寝てないの?」

橋口くんの顔はなんだかにやけていて、少し居心地が悪い。

「お前たちが寝たから俺らが片付けしてたんだろ。で、そのまま少し話してたんだ」

ぶっきらぼうな言い方で夏目さんが説明してくれる。

「あぁ、そうかい。ま、そういうことにしておこう。そろそろみんなも起こしてお開きにするか」

加藤くんを起こしにまた寝室へ行ってしまった。その後ろ姿を見て私も立ち上がると紗衣ちゃんを起こしにリビングへ向かおうとした。その時パッと後ろから手首を掴まれた。
振り返ると夏目さんが小さな声で、「約束な」と言っていた。私は声を出さずに頷いた。
夏目さんがみんなも誘うつもりだったのかと頭をよぎっていたが、こっそり言われたことに驚きつつも内心嬉しく思う自分がいた。
何故かみんなには言いたくないと思ってしまった。
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