再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
「佐伯さん、救急車入るわよ」

「はい」

今日は救急外来での勤務。
どんな患者さんが来るのかいつでも緊張感がつきまとう。
サイレンがだいぶ近づいてくるのが聞こえた。
私は扉を開け、手袋をはめながら待ち構えていると目の前に止まった救急車の中から加藤くんが出てきた。

「お願いします」

いつもの雰囲気とは全く違い、ハキハキとした話し方に加え、態度も違う。
ふとそんなことが頭をよぎると、患者のストレッチャーと一緒にモニターを肩から下げた夏目さんが降りてきた。

「お願いします!」

「はい」

私の後ろで他の看護師が返事をしているのを聞いて我に返った。
ストレッチャーを初療室へ運び入れ、みんなで病院のストレッチャーへと移動する。

「いくぞ。1.2.3」

掛け声がかかるとみんなで患者を移動させるが救急隊の人たちの力強さに改めて感心する。

私は引き継いだ点滴やモニターの移動、バイタルチェックを始める。
救急隊から医師への引き継ぎが行われ、処置が始まる。検査の手配や患者対応に追われていると私は彼らのことを気にする余裕もなくなり、気がついた時にはいなくなっていた。

その日の勤務を終えるとクタクタになり、マンションへ帰る。
すると加藤くんと橋口くんからメッセージが来ていた。仕事の休憩時間に送ったのだろう。ふたりして同じような時間だった。

【のどかさんカッコよかったです! 惚れそうでした】

そんな軽口を入れてくるのはもちろん加藤くん。

【のどかちゃんの働く姿、久しぶりに見たよ。凛としてて、知ってるのどかちゃんとは別人みたいだった】

橋口くんにも褒めてもらい、なんだか少し疲れが取れた。
フフッと笑ってしまう。
ふたりだっていつもの飲んでる姿とは大違いだったよ。仕事になるとこんなにカッコいいんだなと見直したことをふたりに送信したが返信はなかった。
紗衣ちゃんはみんなの救急隊を見たことがあると言ってたけど私は初めて会って以来初めてだから新鮮だった。
きっとみんなはこのまま夜も働いて、明日の朝までだと思うと、大変な仕事だなと改めて感じた。

ふと夏目さんの様子が頭に浮かんできた。
救急隊の青い服を着た彼に目を奪われてしまった。本当に彼の周りだけ違って見えたと思うくらい。久しぶりに彼を見ることができて嬉しかっただけじゃない。やっぱり彼のことが好きになっているんだと思い知らされた。
好きになるって理由があるわけじゃない。自然と目が彼を追ってしまうんだもの。見えなくなると寂しくて、連絡が途絶えると悲しくて、彼に決まった人がいると思っていてもどうにもならない。胸の奥がぎゅっと締め付けられ、彼に会いたくて仕方なくなる。こんな気持ちになんてなりたくなかった。
どうにもならないこの気持ちに涙が浮かんできた。
彼の唯一になりたい。
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