もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
1、いぬのおまわりさん

「はなせんせー、みて!まどのところでネコさんがひなたぼっこしてるー!」

「ほんとだ!今日はお天気が良いから、気持ち良さそうにお昼寝しているね」

「かわいー!ぼくネコさんすきー!」

「うん、可愛いねぇ」

「ねぇねぇ、はなせんせい!あのピンクのおはなはサクラかな⁉︎」

「んー?ああ、似ているけどあれは梅の花だね。桜はもう少し暖かくなったら咲くかなぁ」

「うめかぁ!みく、うめすっぱいけどたべられるよ!」

「えー、美久ちゃんすごいね!先生もうめのおにぎり、大好きだなぁ」


暦の上では立春を迎えても、実際はまだまだ冬を抜け出せていない二月の中旬。

昨日までは曇り空が続いていたけれど、今日は透き通るような晴天が広がっていて、下から見上げると、美久ちゃんの見つけた梅の花のピンクが淡い空の青に色を添えていてとても綺麗だった。


私、芦谷(あしや)葉菜(はな)が担任を務めるよつば保育園の四歳児クラス、りす組の園児十二名を連れて、天気の良い日恒例の午前のお散歩中。

二人一組で手を繋いで車通りの少ない道を歩きながら、好奇心旺盛な子供たちは色々な物を見つけては楽しそうに教えてくれる。


保育士の仕事は、親御さんから大切なお子さんを預かっている分責任も大きくもちろん大変なことも多いけれど、それ以上に無邪気で可愛い子供達に私はいつも癒されている。

風は少し冷たいけれど日差しが割と暖かい今日は、子供達のリクエストで駅の近くの電車が見える公園に向かっているところ。

最後尾についてくれている非常勤の聡子先生も、次から次へと話し掛けられていて大忙しだ。

小学生の兄弟二人の母でもある明るくてパワフルな聡子先生は、保育士四年目の私にとっても頼りになる大先輩で、いつも何かとフォローしてもらっている。
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