もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
3、誰にでも優しい訳じゃない
「── 初めての彼氏だったんです。それなのに二股とか、ひどくないですか⁉︎」

「……ひどいですね」

「犬飼さん、私よりも年上なんですからタメ口で良いです!」

「……分かった」


グビッと何本目かの缶ビールを煽り、さきイカにむしゃぶりつきながら管を巻く私の話を、犬飼さんはたまに相槌を打ちながらただひたすら聞いてくれていた。


── 犬飼さんの部屋は、私の住むアパートから徒歩で十分も掛からないような所にあった。

独身の警察官は何となく寮住まいのイメージだったけれど、特に寮入居の義務はないらしい。何かあった時にすぐに出動出来る範囲内であれば、普通のアパートやマンションでも問題ないのだそうだ。

顔見知りだったとはいえ、名前と職業くらいしかお互いを知らなかった私達が、改めて自己紹介をした後意外とご近所だったことにびっくりしたのはもう何時間前のことだったか。

警察官の彼は、第一当番(日勤)と第二当番(夜勤)、非番(夜勤明け)のあと、週休と呼ばれるお休みが与えられるらしい。今日が非番だった彼は明日の日曜日がちょうどその週休に当たるそうで、今日はとことん付き合ってくれるという。

モノトーンで統一された1Kのすっきりとした室内。

そのテーブルの上や床には、二人で空けたビールの缶がゴロゴロ転がっていた。

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