もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
「今日は松並(まつなみ)公園ですか?」

「……はい!子供達のリクエストで……」

「そうですか。気をつけて」

「気をつけます……!」


ちなみに犬飼さんだから〝いぬのおまわりさん〟。

子供達が付けたあだ名なのだけれど、犬は犬でも見た目が大型のシベリアンハスキーみたいなシャープな犬飼さんにはちょっと可愛過ぎるそれを聞く度に、少し笑いそうになってしまうのは内緒だ。

だけど、そんなあだ名を若干面食らいながらもするりと受け入れてくれた彼は優しい人で。

だから、あの時はただ私を放って置けなかっただけで、彼にとってあれはやっぱり、特別なことでも何でもなかったんだと思う。

現にあの出来事の前と後で、彼の私に対する態度は何一つ変わらないのだから。


「おー、葉菜先生に聡子先生とちびっ子たち!今日も元気だねぇ」

「あ!つるのおまわりさんもいたー!」

「鶴崎さん。おはようございます」


その時、交番の中からもう一人のお巡りさんがひょこっと顔を出した。

犬飼さんの二年先輩らしい鶴崎さんは、犬飼さんの〝いぬのおまわりさん〟に対して子供達から〝つるのおまわりさん〟と呼ばれている。

この二人は見た目も中身も全く正反対で、鶴崎さんは犬飼さんよりも線が細い。

どちらも整った顔立ちというのは同じなのだけれど、どちらかというと犬飼さんは凛々しくて精悍な顔つき。

逆に鶴崎さんは柔らかくて甘い顔つきで、犬飼さんがシベリアンハスキーなら、鶴崎さんはポメラニアンといったところだろうか。

そして寡黙で割と無表情な犬飼さんに対して、鶴崎さんは饒舌でいつもにこにこしている。 
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