もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
「そうね、あなた達にも、日々の癒しは必要だものねぇ?」
そんな聡子先生のセリフに、「うんうん」と嬉しそうに頷く鶴崎さんと、いつも通りの無表情ながらもなぜかそっぽを向いて制帽を正している犬飼さん。
そこでうふふ、と意味深にほくそ笑んだ聡子先生とばっちり目が合い、「確かに子どもたちの癒し効果は絶大ですもんね」と深く同意すれば、「癒し効果をもたらすのは、子どもたちだけじゃないのよねぇ」と、またもや意味深な笑みを向けられてしまう。
その諸々に「……ん?」とは思いながらも、りす組一の甘えん坊、奏多くんが「せんせー、いこー?」と上目遣いで私と繋いでいた手をクイ、と引いたので、そんな些細な違和感はすぐに消えていった。
「あっ、そうだね、行こっか!」
「ああ、引き止めてごめんね。じゃあちびっ子達、たくさん遊んでおいで!」
「うん!バイバーイ!」
「またねー!」
各々が元気に返事をして二人に手を振る。
「それじゃあ、いってきます」
「ああ。気をつけて」
私もペコリと頭を下げ犬飼さんから二度目の〝気をつけて〟を頂いたところで二人に見送られ、再び目や耳や肌で春の訪れを感じながら、松並公園を目指して歩き出したのだった。
── 犬飼さんはあの日のことを、どう思っているのだろう。
あれ以来どうしても考えてしまうけれど、やっぱりあれは、あくまでいち警察官としての延長線上にある優しさだったのだと思う。
だってあの時、犬飼さんは最初に言っていた。
〝職業柄〟葉菜先生を放って置くことは出来ないのだと。
それなのにその優しさに意味を求めようとしてしまう私は、とても滑稽だ。
……あの時はまさか、自分がこんな気持ちになるなんて思ってもみなかった。