もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
連絡先を交換し、三回目のデートで告白されて私達のお付き合いは始まったのだけど、どうやら私は二股をかけられていたらしい。今日のデートでそのもう一人の彼女とうっかり鉢合わせしてしまい、私はあっさり捨てられたのだ。

なかなか会えないなぁとは思っていた。でもシフト制の私と商社勤めの彼とではそもそも休みが合わないのだから、仕方のないことだと特別変だとも思っていなかった。

だけど、たまに会える時には『葉菜の家は落ち着くから』と彼はいつも私の何の変哲もない1Kのアパートに来たがって、なのに私は彼の家には一度も行ったことがなかった。

今考えれば最初から私が浮気相手で、向こうが本命だったのだろう。

ひどい人だと思う。自分の見る目のなさにもがっかりした。一年半も気付かなかっただなんて。

でも、好きだった。初めての彼氏だった。

だからこそ彼との思い出が色濃く残る自宅に帰りたくなくて、私は今、こんな所で無駄に時間を潰している。


「ーー葉菜先生?」


とは言えいつまでもここでこうしていたら凍死してしまう。そうは思うけれど帰りたくはない。

そんなジレンマと一人戦っていた時、不意に静寂を切り裂くような深い声に名前を呼ばれ、ビクッと肩が跳ねた。
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