約束
私は、その日夜の8時頃に家に着くと、
玄関口に中くらいの大きさの
箱らしきものが置いてあるのに気付いた。

これは、何だろうと思って居ると
ベストタイミングでお母さんが
リビングから出てくる。



「あ、おかえりなさい。
ゆい、それ海人くんからよ。」

「え?海人……?」

「正式には海人くんのお母さんが
持って来てくれたものなんだけどね。
どうやら、お部屋を掃除していたら
見つけたらしくって。
それはゆいちゃんにって
言ってくれたのよ。」


海人が私に……?
一体何を……?

そんな事を思いながら私はその箱を
自室に持って行くと、すぐさま開ける。

すると、箱の外側に
メモらしきものが添えられていて、
中にはハートのネックレスが入っていた。


『3年後、ゆいにプロポーズをする。
これは予行練習じゃないけど、
いつもと違ったプレゼントだ。

アイツは明日誕生日だから。』



不器用な文字でそんなことが
書いてあるメモを読むと視界がにじんだ。

きっと、交通事故にあった日に
買ってくれたものなのだろう。

馬鹿、本当に馬鹿だ。
 


「もう、馬鹿すぎだよ……っ。」




私は、そのネックレスを
そっと握りしめると、静かに涙を流す。

少しだけ開いた窓ガラスから、
海人の温もりに似た暖かな風が
濡れた頬をそっと撫でた。


END
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